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3/282014

特別講演会

「知能ロボットの最前線 (11)」

メカトロニクス基礎研究施設主催の「知能ロボットの最前線」と題する特別講演会も今回で11回目を迎えました.そして今回は宇宙を観るロボティクスというテーマにて,宇宙開発に関わるロボティクス研究の分野でご活躍されている先生2名にお話しして頂きました.栗田准教授からは,天体観測と天体望遠鏡の開発の歴史とともに,計測・制御・ロボティクス技術が多く用いられるようになった最新の望遠鏡技術についてご講演して頂きました.大須賀教授からは,宇宙でロボットや人工衛星を制御するために有効であると考えられる,「場(重力場)」を利用したロボット制御についての思想と活用方法と,それらを「場を意識することで構成される知能」として活用する方法について講演して頂きました.どちらの講演も,参加した聴講者の興味をそそる内容であり,質疑応答の予定時間を大きく超えるまで白熱した議論が交わされました.


(1)「望遠鏡発展と今求められる技術」

講演者: 京都大学大学院 理学研究科 宇宙物理学教室 准教授  栗田 光樹夫 氏

【概要】約400年前,望遠鏡がガリレオの手によって発明されてからの望遠鏡の発展の歴史と望遠鏡が人類にもたらした宇宙観の変遷について触れながら,いくつかのユニークな望遠鏡を紹介する.そして現在の最先端の研究として,天文学の新たなフロンティア開拓のために世界の研究者が目指している最新の望遠鏡とそれに求められる技術を紹介する.特に,最新の望遠鏡技術では高いレベルでの工業技術が必要であり,さらにその中でもロボティクスとも関係が深い制御工学(位置決め制御,光波面制御等),画像処理技術(天体観測データの処理技術)等について説明する.


講演の様子1 講演の様子2

(2)「スペースインテリジェンス
         ‐裏脳と表脳:宇宙空間に埋め込まれた知能‐」

講演者: 大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 教授  大須賀 公一 氏

【概要】宇宙空間を移動し作業する人工物は本質的に自律動作能力すなわち知能が必要であり,一方で我々人類は太古から「知能」,「宇宙」に対して大きな好奇心を抱いてきた.『「宇宙」を,我々を広く取り囲む「場」』と捉えるならば,「宇宙」は「知能」に大きく関わる.そこで本講演では,「知能」とは何かを考えるところから話しを始めることで,「知能」と「宇宙」が繋がることを示してみる.その結果,宇宙空間で活動する知的人工物の知能は,宇宙空間に埋め込まれているとみなせるある種の知能を引き出し活用することで完成することを考察する.


講演の様子3 講演の様子4




3/272014

特別講演会

「近赤外光を使った脳研究」

 ※ 大学院医療福祉工学研究科、日本実験力学会 身体運動再建工学分科会、
   日本実験力学会 機械の流れ分科会との共催

 「近赤外光を使った脳研究」をテーマに3件の講演が行われた。近赤外分光法(Near Infrared Spectroscopy :NIRS)は、「にるす」もしくは「きんせき」と呼ばれ、分光学的な手法を用いて生体内のへモグロビンを算出することを目的とし、1980年代から研究が盛んに進められるようになっている。筋や皮膚に含まれるヘモグロビンも計測の対象であるが、今回は脳を対象とした。
 はじめに、光産業創成大学院大学教授の江田英雄先生から「NIRS原理と脳研究手法」と題して講演があった。江田教授は、島津製作所に勤務時代に、近赤外光を使った生体計測装置を日本初の製品化を行い、生体医工学会の新技術開発賞を受賞している。さらに、経済産業省の国家プロジェクト「光断層イメージング装置の研究開発」に参加し、世界初の光CTを開発も行っている。そして株式会社フォトニクス・イノベーションズを起業し、代表取締役就任している。このように工学サイドから脳研究分野に入っていった経験に基づいた内容であった。1990年代のアメリカの脳研究の紹介の後、脳波(EEM)・脳磁図(MEG)・磁気共鳴機能画像法(fMRI)などの説明が続いた。その後、NIRS原理の理論的な解説があり、最新のNIRS装置の紹介があり、教育学分野への応用例について解説があった。
 次に、産業技術総合研究所脳機能計測研究グループ主任研究員の山田亨先生から「functional NIRS (近赤外脳機能計測法) -応用における問題と対処について-」の講演があった。NIRSの計測における問題を、1)プローブ装着における問題、2)生体由来する信号変化の問題点、3)課題遂行実験で生じる問題、4)多チャンネル計測で生じる問題、5)縦断的研究で生じる問題に分けて解説があり、それぞれ具体的な例を示した上で、対処方法の説明があった。さらに残された課題についても説明があり、最後に、山田先生の開発した問題点の対処に利用できるソフトウエアの紹介と、ダウンロードサイトが示された。
 最後に、大阪電気通信大学名誉教授の西原一嘉先生から「空間認知時のfunctional NIRSによる脳前頭前野の賦活域の測定」の講演があった。西原先生は、切断面実形視テスト(MCT:Mental Cutting Test )による空問認識力の評価を、NIRSで評価した実例で解説した。切断面実形視テストとは、立体図(透視図)で立体と断面を示し、切囗の実形を5個の選択肢から選んで解答させるものである。問題の難易度によって、脳の賦活度が異なることが示された。
 NIRSの基礎から生体医工学、福祉工学、スポーツ工学分野などへの応用展開について活発な意見交換が行われた。参加者は44名であった。


講演の様子1 講演の様子2 講演の様子3 講演の様子4




3/172014

特別講演会

「選択取水・利水放流設備 取水盆と微小開度放流の振動について」

講演者: 元Hitz 日立造船㈱ 鉄構・建機事業本部 設計本部 技術総括
        大阪電気通信大学 客員教授  巻幡 敏秋 氏

 工学の分野では振動に関連した重大な問題が数多く発生しており、ダム放流設備においても同様です。ダム湖の水位を調節することを目的とした選択取水・放流設備では、放流時に取水盆が異常振動を引き起こし問題となっています。
 本講演会では、貴重な試験データをもとに振動問題を解決した具体例を、長年その分野で指導的な役割を果たしてこられた巻幡敏秋氏に分かりやすくお話いただきました。


講演の様子1 講演の様子2




3/102014

特別講演会(共催:英国工学技術学会 日本支部)

「電力分野における最新技術動向に関する講演」

 講演題目: 「再生可能エネルギー大量導入時代の電力系統安定性と系統解析」
 講演者 : 福井大学大学院工学研究科教授 IEEE Fellow  田岡 久雄 氏

近年、地球環境問題などから、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーが代替電源として盛んに導入されている。しかし、これらの電源はその不確実性から現在の電力系統に大きな影響を与える。本講演では、その問題を明確にするとともに、対策について、電力系統の安定性と解析の観点から説明された。特に、ICTを活用し、変動する分散電源の出力に応じて需要を調整するスマートグリッドについて詳しく説明された。また、既存の系統との親和性を高めるため、系統連系インバータに、従来の同期発電機と同等の特性を持たせる試みなども紹介された。なお、本講演はThe Institution of Engineering and Technology (IET:英国工学技術学会)日本支部(支部長:本学伊与田教授)との共催であったが、講演は学生への教育的配慮から冒頭の15分は英語で行われ、その後は日本語に切り替えて実施された。機械系の学生の参加者が多いことを配慮して、基本的な説明を丁寧にした。講演の後、学生から活発な質疑があり、丁寧な回答がされて、大変活気のある講演会になった。冒頭の英語による講演もゆっくり丁寧に説明されたので、学生も大体の意味を理解したように感じられた。よい経験になったと思う。参加者は18名であった。


講演の様子1 講演の様子2




7/112013

特別講演会

「選択取水・利水放流設備 取水盆と微小開度放流の振動について」

講演者: 元 日立造船㈱ 鉄構・建機事業本部 設計本部 技術総括
                  大阪電気通信大学 客員教授  巻幡 敏秋 氏

 工学の分野では振動に関連した重大な問題が数多く発生しており、ダム放流設備においても同様です。ダム湖の水位を調節することを目的とした選択取水・放流設備では、放流時に取水盆が異常振動を引き起こし問題となっています。
 本講演会では、貴重な試験データをもとに振動問題を解決した具体例を、長年その分野で指導的な役割を果たしてこられた巻幡敏秋氏に分かりやすくお話いただきました。


講演の様子1 講演の様子2




5/212013

特別講演会

「近赤外線スペクトロスコピィ機器研究について」

講演者: 東京女子医大病院 精神神経科 医師  喜田 光洋 先生

 近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)は経皮的、非侵襲的に脳内のヘモグロビン濃度変化を多点で計測することにより脳機能を計測する検査です。NIRSによる人間の脳の酸素飽和度の計測は1977年に始まり、1995年には日立製作所が脳活動の多点同時計測に初めて成功しています。先行研究に基づいて、NIRS検査による前頭葉賦活課題を行うことで精神疾患の状態像をとらえることや、運動機能の状態像をとらえることが可能となり、これまでNIRSの医療応用は精神科領域、リハビリテーション領域、脳外科領域、脳科学研究などで積極的に行われてきています。東京女子医科大学病院では、既製のNIRS装置を用いた精神疾患における臨床治験をこれまで多数の疾患及び症例において進めています。
 本講演会では、その精神疾患研究の臨床現場の最前線で活躍されている臨床医の喜田先生より、医療の歴史、診断技術の進歩と課題について分かりやすくお話しいただきました。まず、東京女子医科大学病院は外来患者数、入院患者数が我が国で1番、総病床数が2番であり、世界を牽引する臨床研究開発が活発に行われている医療機関であることが説明されました。次に、近年、急激に増加しているうつ病について説明があり、客観的な診断基準の確立が急務であることを力説されました。さらに、NIRSの原理、長所と短所、測定データの解析例を示し、前頭葉の機能を簡便に診断する技術の開発が大きな課題となっているとの説明がありました。