MERI Activity Report
2019 Vol.20
1.巻頭言(全文掲載)
メカトロニクスという言葉は、産業用ロボットの開発や製品化が盛んに行われた1960年代後半に日本のロボットメーカーが提唱した和製英語でした。それは、ロボット技術がメカニクス(機械技術、ハード)とエレクトロニクス(電子技術、ソフト)を融合したものであることから提唱されました。しかし、現在では、和製英語ではなく世界中で使われる言葉になっています。また、その融合技術はロボットに限らず、ハードとソフトが融合したいろいろな機械やシステムに使われ、その性能向上に大きく貢献しています。
今なお、地球温暖化は我々人類にとって解決しなければならない大きな課題になっています。この解決の一つの方策として省エネ技術の開発・普及があります。省エネの契機となったのは、実は地球温暖化ではなく、1973年と1979年に起こったオイルショックでした。これに対応して1979年に「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」が制定されました。この中で「トップランナー制度」が設けられ、年度ごとに性能に対する達成基準が設定されるようになり、技術者の努力により達成され、技術開発が大きく進展しました。例えば、エアコンでは、その冷暖平均COPが当時3.0前後であったものが、現在では6.5を超えるまでになっています。これには、コンプレッサ、熱交換器、ファンなどのハード面の高性能化はもちろんですが、インバータによる運転制御というまさにハードとソフトを融合したメカトロニクスが大きく貢献しています。このように、メカトロニクスは当初その言葉が対象としたロボットに限らず、多くの技術分野で重要なものとなっています。
2019年度は平成から令和に変わり、メカトロニクス基礎研究所の令和最初の研究活動年度になりました。機械工学基礎、計測制御・ロボティクス、バイオエンジニアリング、電気・電子・情報、エネルギー・環境工学の5部門、30人を超える研究員、大学院生によって、多くの共同研究が行われてきました。特に、計測制御・ロボティクスでは特定共同研究も行いました。設立以来、その成果は学術研究の発表の場や論文投稿によって広くまた数多く公表されています。また、優秀な学外研究者をお招きする公開の講演会を開催し、研究の活性化、研究者間の親交、学生の教育に役立てています。本冊子は、2019年度の活動状況や成果をまとめたものです。ご関心をお持ちいただける研究がございましたら、大阪電気通信大学にご連絡ください。企業の皆様には、研究支援室が対応いたします。
この文章を書いているときに、世の中はコロナウィルスが世界的な問題となっています。日本政府でも「非常事態宣言」を発出しました。東京、大阪を含め7都府県が対象都市として指定され、感染者数も増加し続けています。在宅勤務、テレワークなども推進され、問題が収束した後は、同様の問題に備えて社会システムが大きく変わると考えられますが、技術の大きな進展があってはじめてこのような変革が可能になります。今、開発が進められている自動運転や民生用ロボットをはじめ、ハードとソフトを融合したメカトロニクスも多くの部分で寄与することになると思います。メカトロニクス基礎研究所におきましても、社会に役立つ基礎研究の場として、今後の活動を続けていきますので、期待いただきたいと思います。
メカトロニクス基礎研究所 所長 高岡 大造
2.組織説明(以下、目次のみ)
3.共同研究報告
4.共同利用報告
5.講演会
6.研究報告
・CADによるエンジン潤滑解析方法の開発と検証(応力解析及び測定実験)
新関雅俊、小笹俊博、神田利明
・難削材料の機械加工に関する研究
田代徹也、井岡誠司
・義足足部・足継手部の三次元動的Rollover特性に着目した歩行機能計測・評価に関する研究
吉田晴行、森本正治、富山弘基、橋本泰典
・生体特有の二関節筋を考慮した筋力評価システムの開発とその評価に関する研究
~ 二関節筋を考慮した評価方法とトルクによる評価方法の相違 ~
藤川智彦、万野真伸、橘 克典、小出卓哉
・A prototype of ozone water generator for preventing infection in home care
Koichi Umimoto, Aki Kamada, Katsunori Tachibana,
Syunji Nagata, Junichiro Yanagida
・赤外線点検出器を用いた物体内部の高速温度計測法の開発
日坂真樹、新崎笑夢
・距離の違いに応じた投動作の筋力発揮に関する研究
市谷浩一郎、村木有也、中井 聖
・ソフトコンピューティング技術によるシステムの知能化に関する研究
渡邊俊彦、徳山幸治
・ポリトープ型の変動モデルを用いた2リンク倒立振子系のロバスト安定化
伊藤義道,鬼木孝太朗,麩谷榛海,伊与田 功
・CT画像を用いた各椎骨の抽出と骨量の定量評価に関する研究
光本浩士、平野雅嗣、山崎克人
・ダム湖における深層曝気装置の能力向上に関する研究
中田亮生、後藤浩一、齊藤光悦、阿部 剛、
岩松裕二、南出 拓、山岸真孝、野本真広
・最適環境創出技術に関する研究
高岡大造,森 幸治
・3次元造形技術を用いた遠心分離用部品の試作とその性能評価
田中孝徳、田村芳之、高岡大造
7.学術発表論文(業績)一覧
8.共同研究装置・共同利用装置一覧
9.編集後記 (発行: 2020年10月1日)