MERI Activity Report
2018 Vol.19
1.巻頭言(全文掲載)
1710年頃にThomas Newcomen,1764年にJames Wattの蒸気機関が開発されました。大気エンジンが発明され1860年頃にNicolaus A. Ottoによって現在の火花点火エンジンの形態に発展しました。1892年にはRudolf Dieselの自着火式のエンジンが開発され、エンジンの高効率化と大型化が可能になりました。その後もエンジンの性能は高出力化に向けて著しく向上しましたが、1970年代からはNOx, CO, HC(未燃燃料炭化水素)などの有害ガス排出の問題が顕著になりました。1980年頃に三元触媒とエンジン制御という画期的な技術革新でこの問題は解消されました。自動車の生産が増えると排出ガス中のCO2が地球温暖化の主因とされ、これと直接関係する燃料消費率(熱効率)の向上が最も大きい課題です。この問題に対して大学の基礎研究組織と日本の自動車メーカーのエンジン共同開発組合組織が連携しています。熱効率50%を超えるエンジンが出現するようです。この数値は低いと誤解されるかもしれませんが、熱エネルギー(化学エネルギー)を仕事(燃料電池の場合では電気)に変換する効率はカルノサイクルの値を超えることは出来ず、運動への変化の過程に摩擦が存在するので、驚異的な数値であると思います。
上記はエンジンの発展と現在のエンジン研究開発について記したものです、日頃のたゆまぬ研究の成果に、革新的な技術が加わり、モビリティに貢献する動力源が開発されました。現在の電気化への流れにおいても、たゆまぬ研究と革新的な技術が期待さるところです。躍進を続ける、メカトロニクス基礎研究所においても、上記に寄与できる研究があるものと思います。
平成30(2018)年度のメカトロニクス基礎研究所の活動は、最後の平成年間の研究活動となりました。機械工学基礎、計測制御・ロボティクス、バイオエンジニアリング、電気・電子・情報、エネルギー・環境工学の5部門、30人を超える研究員、大学院生によって、多くの共同研究が行われてきました。特に、電気・電子・情報部門では特定共同研究も行いました。設立以来、その成果は学術研究の発表の場や論文投稿によって広くまた数多く公表されています。また、優秀な学外研究者をお招きする公開の講演会を開催し、研究の活性化、研究者間の親交、学生の教育に役立てています。本冊子は、平成30年度の活動状況や成果をまとめたものです。ご関心お持ちいただける研究がございましたら、大阪電気通信大学にご連絡ください。企業の皆様には、研究支援室が対応いたします。
最近、高齢者による交通事故や危険運転に関する事件が際立って目立っています。安全な社会を形成するには、自動運転など今日の先端技術を役立てることが急務となっています。メカトロニクス基礎研究所におきましても、社会に役立つ基礎研究の場として、今後の活動に期待いただきたいと思います。
メカトロニクス基礎研究所 所長 小笹 俊博
2.組織説明(以下、目次のみ)
3.共同研究報告
4.共同利用報告
5.講演会
6.研究報告
・エンジン軸受の変動荷重を考慮した潤滑解析と摩擦測定実験
小笹俊博、新関雅俊
・強い時間依存性の流動誘起構造を示す複雑流体のレオロジー特性の評価とその応用
山本剛宏、堀部悠河、辻中優哉、小柴孝、井岡誠司
・スクロール圧縮機のバイパス漏れ流れの評価法に関する研究
阿南景子、小笹俊博、石井徳章
・長径間ゲートを利用した小水力発電についての基礎的検討
阿南景子、中田亮生
・CGモデルを利用した先端的な手術支援システムに関する研究
大西克彦、小枝正直、登尾啓史
・安全・安心な手術を実現する手術支援システムに関する研究
小枝正直、大西克彦、登尾啓史
・冗長自由度を有する上体ヒューマノイドロボットJela-C2 の開発
鄭 聖熹、向井誠嗣朗、増田広大、入部正継
・飛行ロボットの操作インタフェースに関する研究
疋田真一、伊藤義道
・カーボンインソールによる着地動作の衝撃緩和 ー 膝前十字靱帯損傷の予防に向けた検証 ー
小柳磨毅、田中則子、成 俊弼、三浦大祐、築田英紀、河本佑也、
坪倉成希、藤目晴子、里田由美子、福田裕之
・膝前十字靭帯損傷の予防のためのテーピングの開発
ー 内側楔状骨挙上テープ介入が着地動作時の衝撃緩衝に及ぼす影響 ー
田中則子、小柳磨毅、北之坊侑輝、阪本昂生、籔下裕大、山口和真、
里田由美子、瓜生玲子、中江徳彦、境 隆弘、松尾高行、三谷保弘、椎木孝幸
・人体における体液動態と健康モニタリング ~下肢足部における浮腫評価システムの検討
橘 克典、藤川智彦、新川拓也 ]
・電源環境シミュレータとリアルタイムシミュレータを組み合わせた電力系統解析
伊與田 功、富岡拓也、伊藤義道、滝川浩和
・坑井に挿入したダイポールアンテナによる地中物体の新たな計測のための基礎的な研究
海老原 聡、小谷修平、藤原健伍
・公開鍵暗号の安全性評価に関する研究
村上恭通、境 隆一
・多変数公開鍵暗号のグレブナー基底攻撃に対する安全性評価
境 隆一、村上恭通
・ダム湖の深層曝気に関する研究
中田亮生、山岸真孝、細木祐索、野本真広、岩松裕二、山口昌広
・公開鍵暗号の安全性評価およびその基礎的技術開発
境 隆一、村上恭通
7.学術発表論文(業績)一覧
8.共同研究装置・共同利用装置一覧
9.編集後記